花粉症について

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【花粉症とは何か】

 植物の花粉が原因で起こるアレルギー性疾患を「花粉症」と呼んでいます。

 この花粉症はアレルギーの原因となる花粉が飛んでいる季節だけ症状が出ます。アレルギーを起こす花粉は50種類以上あるといわれていますが、日本で多いのは「スギ花粉症」、欧米ではイネ科、ブタクサ、カバノキ科の花粉症が多く、100年以上前からあるものも多いようです。

 日本でもスギ以外に樹木ではヒノキ、マツ、イネ科ではイネ、ススキ、カモガヤ、オオアワガエリ、キク科では、ブタクサ、ヨモギなどがあります。このように花粉症の原因は様々ですが、日本以外でスギ花粉症はまず見られません。日本以外ではスギはほとんど生えていないのと、戦後大量植林をしたスギが大量の花粉をつける樹齢になったこと、花粉が育ちやすい夏の猛暑が続いていること、木材としてのスギの需要が落ち込み、伐採されることなく放置されていることなども、スギ花粉症増加の原因の一部と考えられています。

 ここでは日本での花粉症の8割を占めるという、スギ花粉症を中心に話をすすめていきます。

 この花粉症、同じように生活していてもなる人と、ならない人がいます。

 いわゆる「アレルギー体質」の人がなるといわれていますが、その人が花粉に接触したからといって、すぐに症状は現れません。原因となる花粉との接触が繰り返され、症状が出る準備が整います。このように、症状が出るまでにある程度の期間がかかるため20~40歳代の人に花粉症が多いのです。

 花粉症は、空気中の花粉を吸い込んだり、粘膜に接触することで起きるアレルギーで、Ⅰ型アレルギーと呼ばれるものの一種です。アレルギーの原因となる抗原(アレルゲン)に繰り返し触れることにより、アレルギー反応を起こす抗体IgEがつくられることが繰り返され、一定のレベルを超えると症状が出るようになります。

 この抗体と抗原が結合し、肥満細胞を刺激することにより、ヒスタミンなどの化学伝達物質の遊離が起こり、肺、皮膚、鼻、末梢血管などに作用して症状を引き起こします。

【花粉症の症状】

 花粉症の代表的な症状は「くしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻づまり(鼻閉)、目のかゆみ」で、「花粉症の4大症状」とも言われています。

 花粉が粘膜に接触した時に起こる拒否反応が、鼻や目の症状として出ます。くしゃみは、連続して起こり、回数が多く、鼻汁は水のようにサラサラした透明なものが大量に出ます。鼻閉は非常に頑固で、両方の鼻が完全につまってしまうことも多く、夜にその症状が多いせいか睡眠不足や口呼吸によるのどの渇きや痛みを二次的に招くこともあります。

 また、花粉が眼球やまぶたに付着すると、涙が出て、強いかゆみが起こります。白目の部分(眼球結膜)やまぶたが腫れたり、むくむこともあります。また、かゆみから目をこすり結膜や角膜を傷つけてしまう場合もあります。

 これ以外にも口から花粉を吸い込んで、のどや耳の奥にかゆみやイガイガ感、気管にまで入り咳が出ることもあります。

 皮膚の症状として、肌荒れ、顔の腫れ、ほてり、ピリピリ感、かゆみが起こることもあります。

 まれに、花粉を飲み込んで消化不良、食欲不振といった消化器症状が現れることもあります。

 その他の症状で比較的多いのが、頭痛、頭重感、頭がボーッとする、倦怠感等で、これらにより集中力がなくなり仕事や勉強に支障をきたすこともあります。

【花粉症の診断】

 つらい花粉症の症状をどうしたら抑え、少しでも快適に生活することができるでしょうか。

 春先、スギ花粉が飛ぶ季節にくしゃみが出たり、目がかゆくなるなどの症状がある人は自分で花粉症と気づくように、一定の時期に症状が現れる場合は花粉症の疑いが濃厚です。

 花粉症以外でも同じようなアレルギー症状を起こす代表的なものに、ハウスダストやダニ、カビなどがあります。1年を通して症状がある場合は、これらが疑われますが、花粉症と思っている人の中には花粉以外のアレルギーまたは、複数のアレルギーをもつ人もいます。

 症状の緩和には、まず自分のアレルギーの敵を、つまり、何のアレルゲンに反応するかということを知ることが重要です。

 アレルギーの原因が何か確認することにより、適切な治療や対策を講じることができます。よって、治療を受けるにあたりまず正確な診断が必要となります。この診断に必要となるのが、問診と検査です。

 花粉症の診断で大切なのは、似たような症状がおこる他の疾患との鑑別と、アレルギーの原因となっている花粉(アレルゲン)を特定することです。問診ではどのような症状が「いつから」「どんなとき」に起こり、「どのような時」に強いのかなど症状についての他に、一見関係ないと思われるような質問もあります。例えば、今までかかった病気や、家族に花粉症や喘息、蕁麻疹などアレルギーの人がいるか、住居の構造や居住地、職業や職場環境などについても質問をすることがあります。

 これは様々な情報から原因となっている花粉の予測や、他にアレルギーの原因をもっているのか推察し必要な検査の項目を決めていくために行います。

 症状がアレルギー性のものかどうか確認するためにいくつかの検査を行ないます。

 ①視診(鼻鏡検査)で鼻の粘膜の状態、鼻腔の構造をチェックします、②好酸球検査(鼻汁中または血液)でアレルギー反応が起こると増える白血球の一種「好酸球」が増えているか調べます、③頭部(副鼻腔)エックス線検査でアレルギー以外の鼻閉の原因がないか調べます。

 これらの検査でアレルギー性と診断されれば、次は原因となるアレルゲンを特定します。スギ花粉以外の花粉やハウスダスト、ダニ、カビが原因の場合や複数の原因がある人がいますので、血液検査や皮膚テストを組み合わせてアレルギーの原因となっているものを割り出します。

 血液検査は血清抗体検査(RAST法)というものを行ないます。

 IgE抗体がつくられることにより、アレルギーが起こることをお話しましたが、特定の抗原とだけ反応する「特異的IgE抗体」が多量につくられます。

 つまり、スギ花粉が花粉症の原因の人は、スギ花粉とだけ反応する特異的IgE抗体が多量につくられます。これを利用して採取した血液をいろいろな抗原と反応させ調べます。特異的IgE抗体の量が多いものが、抗原と考えられます。数多い抗原の中から10種類ぐらいの抗原を選び、皮膚テストの項目と組み合わせ抗原を調べます。

 皮膚テストは、抗原の抽出物よりつくられた液(アレルゲン液)を使用し、皮膚の反応より抗原を特定する方法です。スクラッチテストまたはプリックテストが行なわれることが多いようです。

 プリックテストとは、腕の内側の皮膚に様々なアレルゲンのエキスをつけ、針の先で少しだけ皮膚を刺して傷を付け、15分置いたところで腫れ具合によってアレルゲンを判定するテストです。「赤くなる、腫れる、かゆくなる」等の反応を測定し、判定します。陽性と診断されたものが、抗原と考えられます。

 血液検査や皮膚テストの結果から抗原と考えられるもの、これらすべてにアレルギーを起こすというわけではありません。症状の出ていない「潜在しているアレルギー」も陽性となることがあるからです。

 さらに、確実な検査としては鼻粘膜誘発テストがあります。これは抗原を含ませた濾紙片、または、診断用誘発ディスク(抗原をしみ込ませたもの)を鼻の粘膜に付着させ、抗原を吸い込んだ状態と同じにします。鼻のかゆみ、くしゃみ、
付着部の蒼白化、水溶性の鼻汁、鼻粘膜の腫脹のうち、2つ以上がみられると陽性となります。

 これらの検査の結果をもとに花粉症の診断がされます。まずは、同じような症状を起こすかぜや血管運動性鼻炎などと、アレルギーによるものとを分けてからスギ花粉を含む抗原の確定へとすすむのが一般的です。

【花粉症の治療】

 花粉症の治療は、症状のコントロール、症状が減少した状態の維持、症状悪化の予防、QOL(生活の質)の改善、医療からの解放を目標としています。

 残念ながら特効薬は今のところありません。いわゆる薬物療法による対症療法です。内服薬、点鼻薬、点眼薬というかたちで用いられます。

 物理療法も症状緩和には有効です。内服治療は、抗アレルギー薬により、症状が起こりにくくする予防的治療が中心となります。さらに、つらい症状に対して、それぞれ抗ヒスタミン薬やステロイド薬等を用い緩和を図ります。

 こうした治療でも症状の緩和やコントロールが図れない場合に、「減感作療法」や「鼻の手術」「鼻のレーザー治療」が行なわれる場合もあります。しかし、これらの治療の後でもアレルギーそのものが治ったわけではないので、引き続き自己管理が必要となります。花粉症は予防する方が楽で効果的であると言えます。

 そして治療で大切なのが、医師-患者間のコミュニケーションです。花粉症について、その仕組みや治療法、検査結果、今後の治療方針や薬の使用法など説明を受けるだけでなく、積極的に治療に参加しましょう。

 基本は抗原の除去、回避がアレルギー治療です。 花粉症は命を落とすような病気ではありませんが、適切な治療を行わないなどで悪化させると、喘息や気管支炎などを起こすこともあります。自己管理は重要なポイントです。花粉症日記をつけることをおすすめします。自分の症状の出方もわかり、気をつけるべきことなど問題点を把握しやすいでしょう。

 まずは、必要な日常生活や環境の改善、さらには心身鍛錬などの中から、できることからはじめてみましょう。

花粉症豆知識

ヒノキ花粉症:

 スギ花粉症の人の8割がヒノキ花粉にも反応することがわかっています。

 ヒノキの花粉は、スギ花粉より1ヵ月遅く飛び始め、5月頃まで飛びます。スギ花粉が飛び終わった後も症状が続く人は、ヒノキの花粉症も疑われます。

スギ花粉症の増加:

 全人口の10人に1人が、花粉症に悩まされていて、都市部では、5人に1人と多く見られています。

スギ花粉症を含むアレルギー疾患の増加の要因として、大気汚染や居住環境の変化、ストレスの増加、食生活の欧米化など様々な原因があげられています。

アレルギー体質:

 花粉症は体外から侵入した花粉と体内でつくられたIgE抗体が結びついて起こります。

 花粉に対して、IgE抗体がつくられなければ症状は起こりません。免疫抑制遺伝子と呼ばれる、IgE抗体がつくられるのを抑える作用の遺伝子をもっている人は、IgE抗体がつくられるのにブレーキがかかり、花粉症になりにくいといわれています。

 この免疫抑制遺伝子をもたず、IgE抗体をつくってしまう体質をいわゆる「アレルギー体質」と呼びます。

20~40歳代の人に花粉症が多い:

 花粉症の症状が現れるのは、抗原となる特定の花粉に対するIgE抗体が蓄積されてからなので、ある程度の年月が必要となりそのため子どもには花粉症が少ないのです。

 ただし、花粉に触れる機会が多いほどIgE抗体の蓄積も早く進むので注意が必要です。

 また、高齢者で花粉症が少ないのは、若ときにはまだ、スギ花粉が大量に飛んでいなかったためIgE抗体が蓄積されなかったことと、年をとるとIgE抗体をつくる働きがおとろえることがあげられます。

アレルギーの型:

 生体が自己と異物を区別し、防御する働きを免疫というが、その中で生体に障害をもたらす免疫反応をアレルギー反応といい、Ⅰ~Ⅳ型に分類されます。

 Ⅰ型は、アレルギー反応が速く、症状は分単位で現れ、10~20分で最大となります。花粉以外の抗原(アレルゲン)は、ハウスダスト、ダニ、カビ、食物、昆虫、ペットの毛など。花粉症以外の疾患は、アレルギー性鼻炎、喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがあります。

 Ⅱ型は薬物アレルギーなど、Ⅲ型は糸球体腎炎や膠原病など、Ⅳ型は接触性皮膚炎や膠原病などが分類されます。

花粉症とIgE:

 人間の体は、外部から異物が侵入してくると排除しようとする生体防御のしくみがあります。

 外部から異物(抗原)が侵入するとそれに対抗する物質(抗体)がつくられ、ある一定量に達したところで再び抗原が侵入してくると抗体が抗原と結びつき反応を起こします。これを「抗原抗体反応」と呼び、体にとって都合よく働く場合を「免疫」、不都合に働く場合を「アレルギー」と呼びます。

 抗体には、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDの5種類あり、花粉症に関係するのはIgEです。鼻や目などの粘膜に花粉が付着すると、花粉のたんぱく質が粘液の中に溶け出して取り込まれ、異物と認識されます。その情報がリンパ球に伝えられIgE抗体がつくられます。

肥満細胞:

 血管周囲に多く分布する肥満細胞は、ヘパリン(血液が固まるのを防ぐ作用がある)、ヒスタミン(血管の拡張や透過性を高める作用がある)などの物質を含み、化学的または機械的な刺激などにより、これらを放出します。

 IgE抗体は、肥満細胞と結合しやすい性質があり、結合したIgE抗体がさらに抗原と結合するとその刺激により肥満細胞が活性化されます。この活性化した肥満細胞がヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、花粉症の症状をひき起こします。 

鼻と花粉症:

 鼻の粘膜で放出されたヒスタミンなどの化学伝達物質は、神経を刺激して、かゆみやくしゃみをひき起こします。

 刺激が弱い場合には、かゆみだけが起こり、刺激が強くなるのに応じて、くしゃみが起き、三叉神経が刺激されると鼻汁がたくさん出てきます。

 また、ヒスタミンが血管に作用すると血管の透過性が高まるため、血液の水分が周囲の組織にしみ出て水ぶくれ(浮腫)を起こします。鼻は周囲を硬い骨で囲まれているため、鼻腔の内側が膨らみ内腔が狭くなり、鼻閉が起こります。

目と花粉症:

 花粉は風の流れに乗ってくるので目に入りやすく、花粉に触れた目の結膜は充血し、角膜には炎症やびらんなどの障害が起こることもあり、視力障害が出ることもあります。

 また、激しいかゆみのために、目をたたいたりすると、まれに白内障や網膜剥離などを引き起こす危険もあります。

 角膜乾燥症、コンタクトレンズの使用はいずれも目の症状を悪化させる場合が多いので注意が必要です。

花粉症の問診:

 問診は問診表がよく利用されます。症状についての詳細や他のアレルギーの有無など記入し、それをもとに診療がすすめられることが多いと思います。

 「どのような症状か、いつ頃からか、鼻汁の色や性状、一番つらい症状は何か、ひどくなる時、他のアレルギーの有無など」受診の前に自分の症状について把握しておくことも大切です。

花粉症の検査:

花粉症と鼻鏡検査:

 鼻鏡を使って鼻の中を直接、観察します。鼻の粘膜や鼻の中の様子を知ることができます。

 花粉症の時、鼻の粘膜は白っぽくむくみ、水様性の鼻汁が多く見られます。健康な鼻の粘膜は薄いピンク色ですが、花粉症の初期では赤くなることもあります。

 また、アレルギー以外の副鼻腔炎などで炎症を起こしていることもあります。

 他に鼻のポリープや粘膜の肥厚、鼻中隔彎曲(左右の鼻腔を真中で分ける鼻中隔が左右どちらかに彎曲)など構造上の問題も見ることができます。

花粉症と好酸球検査:

 鼻汁中好酸球検査は、薬包紙に鼻をかんでもらって鼻汁に混じっている好酸球の量を調べる検査で、アレルギー反応の起きている場所に好酸球が多量に出てくる特徴を利用したものです。

花粉症と血液検査(好酸球量検査)

 血液検査では、血液中の好酸球の量を調べます。血液中の好酸球の量が増えていれば、体の中でアレルギー反応が起きていると考えます。

 目の症状がつらくて眼科を受診すると目の分泌物をとって好酸球の量を調べる場合もあります。多ければ目でアレルギー反応が起きていると診断します。

花粉症と血清抗体検査(RAST法):

 使用している薬の影響は受けませんが、欠点は結果が出るまでに日数がかかることで、約1週間かかります。 

 血液検査の血清抗体検査(RAST法)は、健康保険の適用となりますが、比較的高額な検査です。問診をもとに皮膚テストなどと上手く組み合わせて検査してくれるのは、やはりアレルギー疾患専門医でしょう。

花粉症と頭部(副鼻腔)エックス線検査:

 副鼻腔炎(一般に蓄膿症と呼ばれている)、鼻中隔彎曲症の診断にも有効で、鼻閉の原因がアレルギーによるものか、他にあるのか判断するのに役に立ちます。

花粉症とスクラッチテスト/プリックテスト:

 利点は、結果がすぐわかることですが、抗アレルギー剤や抗ヒスタミン剤を使用していると、検査結果が正確に出ないことがあります。抗ヒスタミン剤は市販の風邪薬にも含まれているので、使っている薬があれば医師に伝えてください。

 判定はスクラッチテストよりプリックテストの方がわかりやすいようです。

 これらの検査で反応が小さくてはっきりしない場合に皮内テスト(アレルゲンエキスを皮内注射する)で確認します。いきなり皮内テストをするとショックを起こす場合があります。

花粉症と鼻粘膜誘発テスト:

 使用する市販されている抗原ディスクの種類が数種類しかないため、抗原を確定するのには、実際は行なえないことが多いです。

花粉症と似た病気の見分け方

花粉症とかぜ:

 鼻かぜは目のかゆみがありません。

 また、鼻汁も初期では水様の無色透明でも次第に色のついた粘稠性のものに変わります。

花粉症と血管運動性鼻炎:

 血管の拡張・収縮は血管運動神経と呼ばれる自律神経系統によって調節されています。精神的な不安が関係し、これによって起こる自律神経系統の過敏さに鼻粘膜の過敏さが加わって起こるといわれています。

 季節に関係なく症状が出ますが、アレルギーとの区別は難しい場合もあります。
 
花粉症と薬

花粉症と内服薬:

 薬物療法というと怖がってしまう、または眠くなると思い込んで薬を飲まずに我慢している人、市販薬でその場をしのいでいる人、様々だと思います。確かに薬は人により効き方に差がありますが、薬の処方を熟知した専門医の知恵を借りることもかしこい方法です。

 まず、自分の症状に合わせて“レシピ”をつくってもらい、効き具合をみながら徐々にさじ加減をしていくとよいでしょう。 内服薬と点眼薬や点鼻薬といった局所に使うものを組み合わせることで、症状はかなり改善されるはずです。

 また、これらの他に漢方薬が使われる場合があります。

 漢方薬は一人一人の症状、体質、体力に合わせて処方されるので専門の医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

 症状を抑える目的で飲む場合は、花粉の季節のみ内服しますが、花粉症を起こしやすい体質を改善する等の効果を期待するには、長期間の服用が必要となることもあります。小青竜湯、葛根湯、小柴胡湯などが使われます。

 妊娠中に花粉症になったら、と心配される人も多いと思います。妊娠中は胎盤性ステロイド等のホルモン分泌が盛んになるためか、妊婦さんの3分の1の人は妊娠前より症状が軽くなるようです。症状がひどく困るというような時は、症状に合わせ外用薬(点眼薬、点鼻薬)を使うこともありますが、積極的には使用しません。産婦人科医とも相談するといいでしょう。

花粉症と点鼻薬:

 抗アレルギー薬は軽症・中程度の症状に内服薬と併用というかたちで処方されることが多いです。

 ステロイド薬は強い抗炎症作用があり、鼻汁多量に効果があります。ステロイド薬は副作用を心配する人が多いですが、点鼻薬で鼻という局所に医師から指導された用法で花粉の時期、3~4ヶ月間程度使用する程度では心配はまずありません。

 血管収縮薬は、粘膜の血管を収縮させることにより腫れを改善させるため、鼻閉がひどい時に一時的に効果がありますが、頻回に使うと鼻閉を慢性化させることもあり長期間の連用はしません。

 抗コリン薬は鼻汁の分泌に必要なアセチルコリンという化学物質を抑制するため、鼻汁がひどい人には有効ですが使いすぎると口やのどなども乾燥してしまうことがあります。

花粉症と点眼薬:

 花粉症のよる結膜炎の治療には、抗アレルギー薬とステロイド薬が使われます。

 抗アレルギー薬は抗ヒスタミン作用をもつものともたないものがありますが、いずれもステロイド薬と比べると速効性は期待できませんが、穏やかな効き方で安全性が高いです。効果が出るまでに2週間程度かかるので、花粉が飛び始める2週間程度前から使用するほうが予防的な効果があります。

 ステロイド薬は充血やかゆみを抑えるのに有効ですが、副作用も現れやすいので十分な注意が必要です。一般的に花粉が大量に飛ぶ時期になり、抗アレルギー薬を内服・点眼していても症状がひどい時などに併用します。使用中は眼科で定期的に眼圧等のチェックを受ける必要があります。

 コンタクトレンズを使用している人は、原則としてコンタクトをはずして点眼、または入れる前に点眼、はずしてから点眼するようにしてください。

花粉症と抗アレルギー薬:

 肥満細胞からヒスタミンなどが放出されるのを抑えるはたらきがあり、放出されたヒスタミンの作用を抑える抗ヒスタミン作用をもつものは、眠気や倦怠感などの症状が出たりしますが速効性があります。

 抗ヒスタミン作用のないものは、眠気や倦怠感などの症状はありませんが速効性は期待できません。

花粉症と抗ヒスタミン薬:

 肥満細胞から放出されたヒスタミンの作用を抑制し、くしゃみや鼻汁を抑える効果がありますが、眠気が出やすいので仕事や車の運転、機械作業等を行なう人には使いにくい薬です。人によって眠気の強さも違います。また、自律神経に作用して鼻汁の分泌も抑制します。

花粉症とステロイド薬:

 内服薬では急性で重症な場合に短期間使われることもあります。

花粉症と物理療法:

 家庭でできる症状緩和として有効なのが、「鼻の温熱療法」、「目の局所冷罨法」で薬物療法との併用で症状がかなり楽になります。

 温熱療法は、体温より少し高い42~43℃の水蒸気を1日数回、1回10分程度、鼻から吸入する方法です。吸入以外にも室内を加湿することも有効です。粘膜が乾燥すると花粉が付着しやすく、症状が出やすいことから乾燥は避けましょう。加湿器などの利用もかぜの予防も含め検討してみるのもいいでしょう。

 冷罨法は、冷たいタオルなどを目を閉じたまぶたの上にのせて冷やす方法です。冷やすことにより炎症を緩和させるのとヒスタミンの放出を一時的に抑えることができます。

 外出から帰った時は、うがいの他に目を洗って花粉を流すのも効果的ですが、度々だと目を守る涙まで洗い流してしまうのですすめられません。

花粉症と減感作療法:

 アレルギー体質の改善を図る治療です。

 抗原を微量から徐々に増量して少ない量のみ(0.02まで)皮下に投与することにより、体内に抗体をつくります。抗体が増えるにつれ、症状が軽快していくことを目指します。

 治療効果が出るまでに時間がかかるため、長期間の治療が必要となります。治療は少なくとも6ヶ月、できれば数年間継続します。副作用としては、発疹やショック症状(急激な血圧低下、蒼白、筋肉の緊張低下、振戦など)、喘息などがあります。

花粉症と鼻の手術:

 花粉症をはじめとするアレルギー性鼻炎はくしゃみ、鼻汁、鼻閉という症状が出ます。鼻閉は鼻の中の粘膜が腫れて、鼻腔を塞ぐことで起きます。通常は花粉の季節の終了と共に腫れもひき、鼻閉は解消されます。

 ところが、なかには鼻中核彎曲や鼻のポリープ(一般に鼻たけと呼ばれている)など、もともと鼻腔が狭い人に手術を行なう場合もあります。

 鼻の内側からの手術なので、顔に傷が残る心配はありません。

 鼻中隔彎曲の手術(粘膜だけを切除する場合と骨や軟骨も切除する場合がある)は、通常局所麻酔で行ないますが、1週間前後の入院が必要です。術後も2~3ヶ月間、定期的チェックに通院が必要です。

 鼻のポリープも小さいものは外来で行なうこともありますが、入院していた方が安全で必要な場合もあります。

花粉症と鼻のレーザー治療:

 鼻の粘膜を切除する他に電気凝固器で粘膜を焼いたり、トリクロル酢酸を塗って焼く方法もあります。また最近では、レーザー照射という方法もあります。

 いずれも外来で受けられる治療ですが、粘膜にやけどをつくる治療です。やけどした粘膜が縮んで治ろうとして腫れがとれることを利用した治療です。特にレーザーは治療後の出血も少なく、痛みも少ないため期待する人も多いようです。が、症状が出ている花粉の時期は行なえません。粘膜が充血しているため出血しやすく、麻酔も効きにくいためです。

 花粉の季節直前も傷が治らないうちにシーズンとなるので望ましくありません。また、粘膜は再生しやすく、再生した粘膜がまた元のように腫れてしまうことも考えられます。希望する場合は、耳鼻咽喉科の専門医に相談し、十分に検討することをお勧めします。

花粉症と抗原の除去、回避:

 花粉シーズンになると花粉飛散予測が新聞、テレビ、ラジオなどで報道されます。こういった花粉情報を活用し、外出などの予定や対策を考えるのも有効です。

 外出時の対策としては、症状が集中する目と鼻を花粉からガードすることが大切です。マスク、眼鏡、帽子などは効果があります。

 マスクは花粉専用の特殊なもの(花粉を通さない素材でできたもの)以外でも、湿らせたガーゼを挟むと効果が高くなります。

 眼鏡も花粉専用のゴーグル型のもの以外、普通の眼鏡やサングラスでもかけないよりは目に入る花粉が少なく済み、症状が軽減されます。

 帽子は髪に花粉がつき、後から目や鼻に落ちて症状をひき起こすのを防げます。特につばの広い帽子が有効です。

 衣類の素材と服装としては、花粉がつきにくい織りが細かく、すべすべした素材のものが適しています。毛足の長いセーターなどは不適当でしょう。

 また、花粉で皮膚に炎症を起こす人は、特に衣服とこすれて炎症を起こしやすい首筋をスカーフやマフラーなどでガードするといいでしょう。

 帰宅時には、体や衣類についた花粉が室内に入るのを防ぐために、玄関の前で花粉をよく落としましょう。家族と同居している人は、全員で行なう必要があるので協力してもらいましょう。

 他に花粉を室内に入れないために必要なのは、花粉の飛散が多い晴れた風の強い昼間には窓を開けないことと、できれば洗濯物や布団は外に干さないことです。

 また、洗濯物を外に干す場合は、花粉をよく払い落として取り込む、乾いたらすぐに取り込む、花粉の飛散が多い日は夜間に干すなどの注意が必要です。布団も外でよくはたいてから取り込み、さらに表面の花粉を掃除機で吸い取ります。もちろんこれらの作業を花粉症の人が行なう時は、マスクや眼鏡をするとよいでしょう。乾燥機の利用も有効です。

花粉症と日常生活や環境の改善:

 花粉症の症状を悪化させる要因として、かぜ、たばこ・酒の摂取、不規則な生活、睡眠不足・過労、刺激物の摂取、気温の急激な変化などがあげられます。花粉のシーズンには注意する必要があります。

 また、心身の過剰なストレスも影響があるといわれています。ストレスが自律神経に影響し、鼻の粘膜を過敏にします。趣味など熱中できるものをもつ、自分なりのリラックス法を見つけることも大切です。

 近年、食物との関係についても研究されていますが、まだはっきりとした影響はわからないものがほとんどです。が、一般に肉中心の食生活になるに伴い、アレルギーが増える傾向があるといわれています。

 たんぱく質を取りすぎると抗体をつくりやすくなるためと考えられています。青魚などに含まれるEPAやDHAにはアレルギー反応を抑制する効果があるのではないかといわれていますが、詳しいメカニズムは解明されていません。肉だけでなく魚も食べるようにするのは、やはりいいことのようです。

 生活環境としては、いろいろ心がけても多少の花粉は室内に入ります。室内を舞っている花粉を取り除くのに、空気清浄機が効果的です。また、掃除をこまめに行なうことも大切です。掃除機をかけると排気で花粉が舞い上がったりする場合があります。注意しながらていねいに、床以外にソファーやカーテンなど花粉がつきやすいところもよく吸い取りましょう。ぬれ雑巾での拭き掃除は、床や畳だけでなく棚や家具などについた花粉を退治するにも有効です。

花粉症と心身鍛錬:

 花粉症をはじめアレルギー性鼻炎では精神状態や自律神経の不安定な状態も症状の発現に関係するといわれています。

 自律神経のはたらきが安定することにより鼻などの粘膜の過敏性が下がります。皮膚に刺激を与えることにより自律神経を鍛えることができます。刺激の与え方としては、乾布摩擦、冷水摩擦、冷水浴や冷水洗顔、薄着などがあります。無理のない範囲で取り入れてみるのもいいでしょう。

 また、運動は体を丈夫にするだけでなく、血行をよくして鼻閉の改善にも効果があります。水泳などは先に述べた、皮膚の鍛錬にもなり自律神経にもよい影響があると思います。ただ、すぐに効果が出るわけではないので、無理なく楽しく続けられるものを選ぶといいでしょう。

 なお、花粉の飛散する時期は運動する環境を考慮し、室内や花粉の少ない時間帯を選ぶようにしましょう。

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